次第にじり貧の理由は
日本の津々浦々まで伝わった大連立騒動も75日たって噂も消えた。噂は消えても福田内閣は進むわけだが、次第に前途が険しくなってきた。発足時の福田内閣の支持率は、10月には44.1%、不支持は24.3%だった。11月の支持率は41.3%で不支持は31.3%、12月は支持40.1%、不支持34.2%。1月には34.5%、不支持率は39.8%、2月には32.5%、不支持率は43.2%になった。(すべて時事通信社)
2月の調査にはイージス艦の衝突事故の影響があるといわれるが、継続しての下落傾向はそれだけでは理由にならない。
イージス艦と漁船の衝突事故で、野党やテレビキャスターの「辞めることが事件の責任を取ること」という短絡的な思考が正しいものかどうかは明らかである。辞任を求める野党にたいして、「省の問題をよく知っている石破防衛相が、全責任を負って改革の先頭に立つことが必要」と辞める必要はないとした福田首相の立場が支持を下げたとは思えない。
改革を全面に出し圧倒的な支持率を保った小泉内閣を継ぎ、「私の内閣では..」を連発した安倍内閣は低迷を続け最後には自爆した。官邸メルマガに「公務員改革」「行政改革」を書いた安倍内閣だったが、渡辺喜美行革担当相の孤軍奮闘が目立つありさまで、本気で取り組む熱意は最後まで感じられなかった。
松岡元農水省の自殺との関係を取りざたされている官製談合の(独)緑資源機構は2007年12月に廃止になったが、ここは農水省の天下り先で理事には農水省OBが名を連ねていた。
2005年2月、林道を造るための費用対効果分析の計算データを林野庁が破棄していたことがわかった。これにより対象の林道がどのような理由で必要とされたかが明らかにできなくなり、担当者から「あの林道は作ると決まったんです。当時の計算では造ることでより大きな効果が出るとわかったのです」といわれても、それがどのような根拠だったか確かめることができなくなった。
長野オリンピックの招致問題でも、当時の会計記録が破棄された。インド洋の給油活動の航海日誌も破棄された。税法でも商法でも帳簿の保存期間が定めらているのに、「破棄」によって判断に必要な根拠を隠してしまうのは、行政担当者の自己保身のデフォルトになっているようにもみえる。
同じく2月、道路整備中期計画で建設を決めた2900kmのうち3分の2にあたる約1850kmが、国土開発幹線自動車道建設会議の審議を経ず建設できることが明らかになった。国道を高速道路の規格で着工し、完成後に高速道路に格上げする予定の道路も450kmあり、すでに一部は建設が始まっている。
国道なら国交省が誰を気にすることなく作れる道路である。完成後に高速道路に格上しても建設当時の名目が国道なら国道として作れる。もちろん財源は税金である。平成19年度の予算では、一般歳入57.5兆円、特別会計362兆円(純計額175兆円)で、道路特定財源が5.6兆円ある。使いにくくてガラガラの無用の長物と思われている国道の地下の駐車場を全国14カ所に作るために国土交通省が使ったのが道路特定財源である。(財)「駐車場整備推進機構」が作った駐車場を管理・運営するが、これが国交省の天下り先なのは周知の事実である。職員用のマッサージチェアやカラオケを買ったのも道路特定財源である。どうも道路特定財源は国交省の「打ち出の小槌」のようで、こんな便利なものを手放そうとしないのは当然だろう。
改革はどうなった
福田首相が提案して一斉に抵抗が現れた「消費者庁」がそれを端的に示している。「消費者庁」は、中国ギョウザ事件で縦割り行政の弊害、連携の不備が指摘され「消費者重視」として打ち出されたものだが、経済産業省、農林水産省、厚生労働省はまるで「省の死活問題」だというようにピリピリしている。甘利経産相の現体制の擁護、若林農水相の食品行政の実績強調にもナワバリ確保の意思が現れている。両氏とも今は担当大臣でも、1年前には省庁代表する立場ではなかったはずだ。それが大臣になったとたんにその省庁を擁護する発言を行う姿が奇異にみえるのだ。本人が心からそう思っているのか、官僚に言わされているのか、福田首相はそれに対してどう考えているのか知りたいところである。
公明党の冬柴氏でさえ国土交通大臣になった途端、国交省の擁護の立場に変わったように、不思議さ、あやしさが大臣にはある。「大臣対応最初の最初」「いうことを聞かないときの Q and A」「サルでもわかる大臣の使い方」などという官僚のマル秘マニュアルがあるのだろうか。
冬柴国交相は、暫定税率を10年後廃止すると言い出したが、10年後にどうなっているかは誰もわからない。自分の責任期間外に問題を先送りするのはまさに役人的発想で、見事に国交省に取り込まれてしまった印象がますます強くなる。
小泉首相が劇的な支持を得たのは、霞ヶ関をはじめとする官僚の怪しい行動が日本の不利益になると国民が感じていて、小泉首相がそれをまとめて解決するために奔走すると思ったからではないのだろうか。郵政選挙はまさに、その象徴に見えた。
安倍首相もそれを引き継ごうとしたが、官僚の抵抗と小泉首相が押さえ込んだ抵抗勢力の復活により、公務員改革、行政改革は浮いた存在になった。抵抗勢力が結集して誕生させた福田政権にどのような改革ができるのだろう。実効ある国家公務員制度改革ができるのだろうか。
人は敏感なもので、はっきり面と向かっていわれなくても、態度や言葉の端々で相手の評価をすることができる。「この人はやる気があるのかないのか」「できるのかできないのか」それを敏感に感じ取っているのが内閣支持率だと思えてならない。
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