主筆の呪文で、民主10のダメージ
11日4日夕方、小沢代表は辞任表明の記者会見を開く。小沢代表は辞任の理由を「福田総理の求めによる2度の党首会談で、総理から要請のあった連立政権の樹立をめぐり政治的混乱が生じたことを受け、民主党内外に対するけじめとして民主党代表の職を辞することを決意し、本日、鳩山由紀夫幹事長に辞職願を提出し、執行部をはじめとして同僚議員の皆様に私の進退を委ねた」と切り出した。
そして、「特定の国の軍事作戦に日本は支援活動をしない」、「新テロ特措法案は連立できるなら成立にこだわらない」の2点を福田首相が確約したこと。参院選での民主党の公約が今のままでは実現できないこと。民主党はいまださまざまな面で力量が不足し政権担当能力に疑問をもたれている、政策協議を行いを司政に参加することで民主党の政権担当能力を示し、政権運営の実績を示すことが民主党政権実現への近道と考えていたことを明らかにする。
さらに、「党首会談に関しての新聞、テレビの報道が報道機関としての報道、論評、批判の域を大きく逸脱しており、私は強い憤りをもって厳重に抗議したい。特に11月3、4両日の報道は、まったく事実に反するものが目立つ。(中略)連立構想の小沢首謀説なるものまでが社会の公器を自称する新聞、テレビで公然と報道されている。いずれもまったくの事実無根だ」という、異例の「中傷報道に厳重に抗議する」コメントを発表し、「報道機関が政府・与党の宣伝機関と化したときの恐ろしさは、亡国の戦争へと突き進んだ昭和前半の歴史を見れば明らかだ。また自己の権力維持等のために、報道機関に対し、私や民主党に対する誹謗中傷の情報を流し続けている人たちは、良心に恥ずるべきところがないか、自分自身によくよく問うてみていただきたい。各種報道機関が1日も早く冷静で公正な報道に戻られるよう切望する。」と社会の公器である報道機関の暴走を批判する。
このコメントに対して、党首会談報道の記事数で他を圧倒した産經新聞が「足かけ20年「小沢時代」終わりの予感」、「『小沢時代』終わりの予感」のタイトルで「これでは、老獪な自民党の情報戦に負けるはずである。メディアを非難する前に、「なぜ大連立は失敗したのか」を深く反省しなければ、小沢氏の政治力は急速に衰えるだろう。」と乾正人政治部長が署名記事を載せる。続いて(政治的)死亡記事にも似た「『大胆かつ複雑』「成功と挫折」 小沢手法の軌跡」で、小沢代表の今までの歩みをとして報じ「これも「お国のため」の行動なのか、小沢氏の今後の動きが注目される」とまとめ、以後小沢代表の行動に疑問を投げかける記事を掲載する。「仲介人」渡辺主筆の読売は直接の論評を避けたが、後日「小沢氏は真実を語れ」と赤座弘一政治部長の「実に理解に苦しむ発言である。....」という署名記事で対抗する。
「中傷報道に抗議」に関する報道はいずれも単発で、「中傷報道」の内容について掘り下げる報道はなく霧散するように話題から消えた。フィクサーの暗躍については週刊誌的な記事のみとなり、朝日新聞11月10日社説「『大連立』仲介? 読売で真実を読みたい」、毎日新聞11月13日社説の「『党首会談工作』『さる人』の説明が聞きたい」、11月12日夕刊特集ワイド「前略−−渡辺恒雄様 「大連立」構想、生みの親ってうわさですが」で終幕となる。
朝日新聞11月10日社説「『大連立』仲介? 読売で真実を読みたい」要旨
- 「さる人」から話を持ちかけられ、その人物の勧めで「代理人」と会い、党首会談が実現した。
- 読売新聞を除く多くのメディアが、「さる人」とは読売新聞グループ本社会長で主筆の渡辺恒雄氏と報じている。
- 首相と野党第1党の党首に、会談と「大連立」話を仲介したのは、報道機関のトップとして節度を越えている。
- 8月16日付社説で読売新聞は「民主党も『政権責任』を分担せよ」と大連立を促した。
- 新聞が政治の現況を論じ、進むべき道について信じるところを述べるのは言論機関として当然だ。
- 政治家に会い意見を言うこともある。権力者に肉薄しふところに飛び込むのも取材手法だ。
- だが目的は、主張を広め、事実を報道するためだ
- 記者の主張の実現のために党首会談を働きかけたり、ひそかに舞台を整えるのは行きすぎだ。
- 渡辺氏は以前新聞協会長を務めた日本の新聞界の重鎮だ。
- 読売新聞1000万部の経営のみならず、社会への功績が評価され新聞協会から新聞文化賞を贈られた人物だ。
- 敏腕の政治記者の経歴があり、中曽根元首相をはじめ政財界に幅広い人脈がある。
- 渡辺氏の回顧録には、自らプレーヤーとして政治を動かしてきた経過がふんだんに書いてある。
- 回想は政界裏話のおもしろさはあるが、取材対象と一体となり政治を動かす姿に違和感がある。
- 事実を伝える記者が、裏では事実をつくる側に回っていては報道や論評の公正さが疑われる。
- 政治記者が、政治家ら取材対象と一体になり似たようなことをしていると思われたら迷惑だ。
- 読売新聞は、大連立を提案したのは小沢氏だったと大きく報じた。
- 小沢代表が「事実無根」と抗議すると、政治部長の署名記事で「小沢氏は真実を語れ」と圧力をかけた。
- 読売新聞が仲介者については報じないのはなぜか。
- 真実に近い情報を握っているのは読売新聞だ。
- 読者の知る権利に応えるために、読売新聞の真実の報道を期待する。
毎日新聞11月13日社説「『党首会談工作』『さる人』の説明が聞きたい」要旨
- 大連立構想の真相は不透明だが国を治める権力の所在にかかわる重大問題だ。
- 当事者の福田首相は当然のこと、「さる人」である仲介者も真実を語るべきだ。
- 党首会談は、8月と10月の「さる人」からの接触、10月の代理人との接触ではじまった。
- 読売新聞を除くほとんどのメディアが、読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長兼主筆が「さる人」だと報じている。
- 渡辺氏が仲介をしたのなら、事実を紙面で明らかにすべきだ。
- 8月16日付社説で読売新聞は「民主党も『政権責任』を分担せよ」と大連立を提唱した。
- 党首会談後の11月5日付社説でも「小沢代表辞意 それでも大連立を目指すべきだ」を掲載した。
- 社説で大連立を提言するのは一つの考えだ。
- それを記者が政治家に説くことも、求められ助言をすることもありうる。
- だが、新聞が権力者間の仲介役をかって出るのは、新聞の使命を超える。
- 新聞が政治の権力づくりの当事者になれば、権力監視という重要な役割を果たせない。
- 政治家のパイプ役になれば、報道の公正さを損なう。
- 渡辺氏は業界の半世紀以上の功績で、今年度の「新聞文化賞」を日本新聞協会から受賞した。
- 経営者としても政治記者としても評価ある人が、口をつぐんでいるのはおかしい。
- 日本新聞協会の新聞倫理綱領には、「国民の『知る権利』は、あらゆる権力から独立したメディアが存在してはじめて保障される」「新聞はそれにもっともふさわしい担い手であり続けたい」と書かれている。
- その新聞倫理綱領を作った時の新聞協会会長が、渡辺氏ではないか。
毎日新聞11月12日夕刊特集ワイド「前略−−渡辺恒雄様 「大連立」構想、生みの親ってうわさですが」要旨
- 党首会談の仕掛人「さる人」は、読売新聞主筆のナベツネさんともっぱらだけど。
- 初夏の頃訪ねた、読売新聞東京本社7階主筆室の大先輩記者のナベツネさんは、旧制高校のインテリ青年の面影を残すテレ屋さんだった。
- 参院選が近づき、安倍首相のことを不安を持ちながら「彼の政治感覚は鋭い」と気を使ってたよね。
- インタビューの間にかかった電話に「そんなことしたら政治生命なくなるぞ!」とすごんだのは怖かった。
- 党首会談の黒幕はナベツネさんみたいだけどホントはどうなの。
- そういえば読売は8月16日付の社説で大連立やれって書いてたよね。
- 新聞は談論風発がいいよね。
- でも新聞記者ってなんなの?
- 取材して、書いて、読んでもらってその繰り返しだよね。
- ナベツネさんも記者でしょ。墓碑銘にするって中曽根康弘さんが書いた「終生一記者を貫く 渡辺恒雄之碑」っての見せてくれたよね。
- でも、「さる人」になって「大連立」政権樹立を作ろうと動いてるよね。
- なら、もう記者じゃなくて政治動かす権力者そのものになっちゃってことね。
- せっかくの墓碑銘は「81歳2ヶ月まで記者を貫く 渡辺恒雄之碑」になるなぁ。
- とびきりのスクープを取るときゃ権力者の懐に飛び込まなきゃならないのはアリだよね。
- 政治家から聞かれりゃアドバイスもするよね。
- でも、距離は保たないとね。知ってるとは思うけど。
- 1億火の玉に突っ走ったホントの大政翼賛会とは違うだろうけど、鳩山幹事長が大連立を「大政翼賛会」と怒ったのはそれほどショックだったんだよね。
- おまけに選挙で選ばれたわけでもない言論人が超巨大与党を作っちゃ、ぞっとするなぁ。
- まさか「俺もあと2,3年だ」と考えて、「ここで一発決めとくか」って思ってるのかなぁ。
- 最後の著書だっていう「君命も受けざる所あり」の帯の「権力と時流に動ぜず わが内なる声に従う」ってこのことだったの。
- 申し込んだけど、受けてもらえなかった。勝手に書いたけど墓場まで真相持ってかないでね。
どうも「さる人」は昔から日本の政治に介入してきたようだ。
この介入がなかったら、日本はもっと悪くなっていたのだろうか。それとも良くなっていたのだろうか。
投票率が低いとはいえ、選挙で選んだ代議士が別なところの思惑、利害で動いていたのでは、民主政治とはいえない。
ひょっとして、政治に無関心になるよう柔らかめの記事を提供するのが、読売新聞の主たる目的だろうか。
そして、読売新聞政治記者の別名は「仲介屋」「政治屋」になるのだろうか。
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