2007年8月13日

「アクトビラ」の始動とテレビ局凋落の始まり 3  TV 2.0

「7時のニュースは7時に見なくてもいい」


「TV局が番組を作って放映し、それを視聴者が見る」という形がTV放映開始以来続き、これがTVの最終型だと思われてきた。
しかし、コンテンツを充実させVODを行うアクトビラは、これを過去の物にする。

今までなら、8時に帰宅したのでは録画してない限り7時のニュースは見られない。
日曜日に起きた中越沖地震はニュース番組が多い日曜日だったのでLive報道を見ることができた。しかし通常番組枠の月曜日からは、時代劇や探偵物の再放送、テレホンショッピングなどが流され、地震の情報は見たくてもニュース番組の時間まで待つしかなかった。

VODではこれが根本的に変わる。
8時に帰宅しニュースが見たかったら、VODのニュースチャンネル(番組)を選べば、ニュース番組を始めの部分から見ることができる。途中で席を外すなら番組を一時停止にすればいい。
事件の続報を見たければ、次々アップロードされる関連ニュースを見ればいい。
地方で起きた事件を、地方局またはキー局から派遣されたクルーが取材してキー局が全国に放映する流れでなく、地方局のクルーが取材して編集、それをVODのサーバーにアップロードすれば、世界中の誰でもその瞬間からその番組を見ることができるようなる。

見たい番組を待つ必要はない、放映される時間を気にする必要もない。自分の都合に合わせて見たい番組を見ればよいのだ。途中で席を立つときも、番組を録画する必要はない。自分の都合に合わせて止めておけばよいのだ。
裏番組が何かも気にならない。録画する必要もない。見たい番組の順番を決めてつぎつぎ見ればいいだけのことである。

アクトビラは TV 2.0か


「激走! 5000キロ」(原題 THE GUMBALL RALLY 1976年/米国)が好きでも、DVDがなければレンタル屋は棚に並べてくれない。しかし、デジタル化されてVODのリストにのれば、見たいときにいつでも見ることができる。プレスしてDVDを作りパッケージにする必要は全然ない。これはアマゾンなどのいわゆるロングテールだが、VODでは在庫や物流にかかるコストはさらに少ない。

VODのネックの一つはコンテンツの数だが、アクトビラには次々とコンテンツホルダーが参加を表明している。母体の大手家電メーカーの多くは、映画会社と深い関係を持っていた。NHKには例のアーカイブスがある。2008年度には2,000本を超えるコンテンツを用意するという話も聞くが、多分それ以上の本数になるだろう。インターネットで勝者になるビジネスモデルには、いつも「圧倒的」という言葉がついてまわる。

使い慣れたTVリモコンだけで利用できることもアクトビラの利点である。
ごちゃごちゃしたYahoo!のインデックス画面を見慣れた目に、シンプルなGoogleのトップページはとても新鮮に見えたものだ。今はインターネットのポータルサービスに似たアクトビラのメニュー画面だが、洗練された独自のユーザインターフェイスが現れれば、以後はそれがVODポータルの標準になる可能性さえある。

家電業界には、「TV沢山作ったのに稼いでいるのはTV局ばっかり」の鬱憤があると聞く。さらに「PC + ディスプレイ連合」のPCセントリックによって、TVは居間から追い出されつつある。情報家電ネットワーク化に関する検討会に参画した主要家電メーカーの、居間を取り返すことを悲願としたアクトビラは、これらを一挙に解決できる乾坤一擲のTVセントリック大作戦とみることができる。
最近、NTTはブロードバンド回線をTVに接続するサービスを進めているが、これも流れに沿っている。
「圧倒的」がどこまで進むのか見ていきたい。

準備中:TV局の生き残り方
準備中:多様化する生活の中で生まれる流行

2007年8月11日

「アクトビラ」の始動とテレビ局凋落の始まり 2  生活に合わせたTV

「TVに合わせた生活」から「生活に合わせたTV」


米国では数年前から、インターネットとTVの録画機能を合わせたティーボ(TiVo)の利用で、自分の生活に合わせてTVを見る人々が増えている。TV局が流す番組でなく、ティーボに録画した番組を好きなときに見る生活である。ドラマをまとめてみたり、CMをカットしたり早見することは当たり前で、検索することを「ググる」というように、「今週のER、ティボっといて」のように使われるほど普及が広まっている。

ビデオ・オン・デマンド(VOD)


今までポータルサイトとしての紹介が多かったアクトビラだが、本命はVOD(ビデオ・オン・デマンド)である。VODは、現在の垂れ流し型のTV放映、CATVと異なり、いつでも見たい番組を頭から見ることができるサービスで、アクトビラでは、これをハイビジョン品質で視聴することができる。

VODは、1990年代に現れたが影が薄かった。米国では、1990年代後半に事業として現れたが、協力する映画会社が少なくコンテンツが確保できず失敗に終わった。日本に登場したのは2000年だが、当時のインターネット利用者は37%。当時の回線は、ダイアルアップ55%、ISDN約34%、ブロードバンド約7%(330万人)という環境だったため、ストリーミングに必要な回線容量が足りず有用なサービスとして定着しなかった。しかし、ブロードバンドの普及率は、2003年に利用者の48%(2,655万人)、2006年には65%(5,687万人)になった。(数字は総務省通信利用動向調査より抜粋) 2007年夏には、NTT東日本だけでFTTHの契約数が400万件を超えるなど、VOD向けのインフラストラクチャは急速に充実している。

当初、瞬く間に成長を進めるインターネットビジネスと比べ、製品の製造が必要でアクトビラは展開スピードが遅いことを揶揄されたが、ここにきて2008年度に予定されていたストリーミング放映を半年以上前倒しするなど展開のスピードを早めている。8月9日には290,000件程度だったGoogleの「アクトビラ」の検索結果も、8月13日には343,000件、14日には426,000件に増えた。注目度は以前よりずっと上がっている。

アクトビラは、いままでの「TVに合わせた生活」を「生活に合わせたTV」に変える。ようやくTVが、最近の生活形態に追いついたのである。

参考:8月12日。NHKの朝のニュースの中でインターネットテレビとしてアクトビラが紹介された。
インターネットでハイビジョンが見られるサービスと報じられたが、最初に現れたのは、よくあるポータルサイトと似た画面。しかし、後半の大型TV全画面で流れるハイビジョン画像は迫力があり、僧衣の下の鎧を見させられた感があった。説明に登場した松下電器産業の映像ディスプレイデバイス事業グループのマネージャーは「見たいときに見たいものを」を強調していた。

「アクトビラ」の始動とテレビ局凋落の始まり 1  ハイビジョンVOD

2007年8月8日、「デジタルテレビに映像配信」という見出しで「アクトビラ」のニュースが朝日、読売、毎日、日経など全国紙と地方紙に載った。その2日後、「アクトビラ」に対応した「VIERA(ビエラ)」シリーズの記事が掲載された。8月以前に「アクトビラ」という言葉が記事になったのは3月のこと。じつに4ヶ月以上前のことである。
9月1日からの映像配信サービススタートを前に攻勢をかけ始めた「アクトビラ」とはなんだろう。

「アクトビラ」の生い立ち


2006年2月、松下電器産業、ソニー、シャープ、東芝、日立製作所の家電大手5社が、インターネットにブロードバンド接続したデジタルTV向けのポータルサイトを研究するワーキンググループ「DTVポータル検討ワーキンググループ」(DTP-WG)を発足させることを発表した。ポータルサイトに接続するデジタルTVの仕様を共通化し、普及を促す考えだという。

2006年6月、、松下電器産業、ソニー、シャープ、東芝、日立製作所の家電大手5社とソニーコミュニケーションネットワークが、デジタルテレビ向けポータルサービスを行う会社「テレビポータルサービス」を共同設立すると発表。資本金は10億円で、松下が35%、ソニーコミュニケーションネットワークが25%、ソニー、シャープ、東芝、日立製作所が各々10%ずつ出資する。新会社は、ポータルサービスと対応するデジタルTVの仕様の共通化、映像配信サービス(VOD)や、生活情報サービスを提供する事業者の参加を募る。

2006年10月、テレビポータルサービスは、テレビ向けポータルサービス「アクトビラ」を2007年2月に開始すること、2007年度中にテレビ向けのストリーミングVODを、2007年度にダウンロード蓄積型サービスをめざすこと発表した。

当時の反応は、すでにある Google、Yahoo!などの強力なネットワーク型のポータルサービスに対し、いまさらインターネットTVを作ってどうする、TV用のポータルを作ってどうするといった内容が多かった。

2007年2月、松下電器産業が「アクトビラ」内で、生活情報やカラオケが見られる「Panasonic TV スクエア」を開始。同社のビエラのほか、ソニーのブラビア、日本ビクターのエグゼも、インターネットに接続すればこれらのサービスを利用できるようになった。テレビポータルサービスに参加する大手家電メーカーは、最終的にはデジタルTVの70-80%をアクトビラ対応機種にしたいと意思表示をしたが、「アクトビラ」はネット対応テレビのリモコン操作で見られる新しいポータルサイトという見方が多かった。受動的な視聴形態を前提に、「TVのようなプッシュ型」のサービスとインターネットコンテンツの表示ができる装置と捉えられ、VODについてはあまり話題にならなかった。

2007年3月には、シャープの「AQUOS」の13機種、ソニーの「BRAVIA」に6機種が「アクトビラ」に対応、4月には、松下電器産業の「ビエラ」の10機種が対応になり、日本ビクターの対応機種も含めると、アクトビラ対応製品は66機種となった。
「アクトビラ」に関する報道は、TV、新聞に現れることはなく、もっぱら日経のIT、メディア関係の雑誌の記事に現れる程度。それも、iモードやEZweb、ワンセグやWiiと比較され、TV屋が考えたTVのためのポータルサイトとしてマイナーなイメージのの論調が多く、TV局を超えて映像配信事業を行う映像ポータルとしての記事はなかった。

2007年8月8日。テレビポータルサービスは、動画ストリーミング配信サービス「アクトビラ ビデオ」を9月1日から開始することを発表した。
発表の内容には、映像符号化方式はMPEG-2(アクトビラ ビデオ)とH.264(アクトビラ ビデオ・フル)。ビットレートはMPEG-2が2〜4Mbps、H.264が4〜8Mbpsを予定。9月1日から10月31日まではお試し期間で無料。それ以後は、無料コンテンツと有料コンテンツになる。料金は1本105円から。スタート時に用意するコンテンツは50本。11月1日からは約300本、2008年春までに1,000本をめざすとあった。

そう、インターネットの高速回線を接続するだけで、リモコン操作でいながらにして好きな映画を選び、大画面でDVDよりも綺麗なハイビジョン品質を映像を鑑賞できる環境「アクトビラ」が生まれたのである。