次世代メディアで映画はどうなる
映画やTVドラマ、アニメなどの、セル、レンタルの用途はどうだろう。日本映像ソフト協会によれば、2007年上半期のビデオソフトの総売上は1483億5800万円。その99.7%がDVDビデオで販売用が65.5%、レンタル用が33.9%だという。販売向けは、1位が洋画、2位がアニメ、3位が邦画・邦楽の順。レンタル向けは、1位が洋画、2位がアニメ、3位は前年比2倍の伸びで邦画を抜いた海外TVドラマ。4位が邦画の順。販売のルートは、1位がレコード店、2位が家電ルートを抜いたインターネットルート、3位が家電ルート、4位がレンタル店ルートだそうだ。
これら映画DVDは、特典メニューがついたものでも8GB以下なので2層レイヤーのDVDに余裕で入る。なかには4.7GB以下のものさえある。メディアの容量上限からサイズを決めた内容と思うが、英語版、日本語版の字幕と音声、監督や出演者の解説がついてもサイズはこの程度である。
映画を借りて見るとき、それがBlu-ray でも HD DVDでも DVDでも入れ物はどうでもいい。映画が見られればいいのだ。
たしかに、大容量の次世代ディスクなら、本編のほかに特典映像をたっぷり入れるスペースができる。
だが、映画DVDを借りる/買うのは、映画自体に興味を持つからである。120分の映画を編集し直して125分の Unrated Editionという別編の映画を作れば買うファンがいる。買う理由は、最初のバージョンの特典映像33分が後者で145分になったことではないのだ。
しかし、すでに業界は動いている。セル販売の「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」を例にとると、DVD、Blu-ray Disc、HD DVDとも本編は約138分、Blu-ray Disc、HD DVD、3枚組DVDには約165分の特典が付いている。価格は 次世代ディスク 4,980円、DVDが1枚組(特典映像なし)2,980円、3枚組が 4,480円である。
本編と特典映像が同じでも、販売側の都合でメディアが変わると価格が変わる。もうしばらくしてDVDの販売が押さえらるようになれば、否応なくどちらかのプレーヤーを買うことを強要されることになる。いまのDVDとプレーヤーで十分満足できる映画が見られるのに、どうしてまた機器を買い換えなければならないんだという声がでるのは当然だ。
だがそんなゴタクを聞いてくれる耳はどこにもなく、DVDは売られなくなり、DVDプレーヤーも手に入らなくなるのだ。
しかも、Blu-Rayが収穫逓増に入れば、HD DVDは次第に姿を消し、ソフトは買えなくなりプレーヤーは役に立たなくなる。HD DVDが主流になれば逆の現象になる。
このような競争は、10年ほど前にもあった。VHDとレーザーディスクの争いだ。
VHDとレーザーディスク
VHDとレーザーディスクは1980年代初めに登場したビデオディスクである。VHD陣営には、松下電器産業、日本ビクターをはじめ、東芝、日電HE、三菱、三洋、シャープ、ヤマハ、赤井、トリオ、アイワ、クラリオン、山水など15社以上の企業が集まっていたが、対するレーザーディスクはたった1社、パイオニアだけでスタートしたのである。
双方のディスクのコンテンツは、映画、アニメなど、現在のDVDと同じだったが、すべてセル販売でDVDのようなレンタル店での貸し出しは行われなかった。製品も、当時はまだ映画を自宅で見る習慣が根付いていなかったため、映画マニアのための嗜好品の意味合いが強かったといえる。
当初は両陣営のシェアに開きはなかったが、VHDの水平解像度240本に対してレーザーディスクの440本の水平解像度とマニアにとっては気になる画質の差や、レーザーディスク陣営がCD/LDコンパチブルプレイヤーを出したこと、カラオケにレーザーディスクが使われたことなどで、ユーザがレーザーディスクに流れるとともに企業もVHD陣営から次々と離脱し、最後には松下電器産業、日本ビクターまでもがレーザーディスクを発売する事態になった。
その結果、売れなかったとはいえ決して少くない数のVHDのユーザが、プレーヤを買いソフトを買いそろえていたが、VHD陣営の縮小とともにソフトは発売されなくなり、プレーヤが壊れても新しいプレーヤを入手することはできなくなって、次第に利用したくても利用できない状況になっていった。
そしてその後DVDの登場により、レーザーディスクも消えていった。
ワゴンセールでLPやEPレコードと一緒に並ぶレーザーディスク、VHDだが、レコードに手を伸ばすことはあっても、VHDやレーザーディスクはジャケットを見ることもなくホロ苦い気持ちになるだけである。
新しい技術によって新製品が生まれ新たな市場で利益を得るサイクルは、進歩がある限り繰り返される。「計画された陳腐化」は、経済活動の中に盛り込まれているのである。
しかし、意地の張り合いで統一が行われず、どちらかを選べと迫られて消え行く運命の製品を選んでしまった消費者は、運が悪かったとただ諦めるわけにはいかない。
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