2007年12月16日

大連立の破談と首相辞任

安倍首相辞任劇の2つのトリガー

安倍首相の辞任に、週刊現代の「相続税脱税疑惑」の記事と、「党首会談を呼びかけた民主党小沢代表から会談を断られた」というの背景がある。公式の辞意表明は、党首会談が破談になったことを伝えた自民党国対委員長大島理森氏に対してのものだ。

「相続税脱税疑惑」の記事は安倍晋三事務所の素早い対応により、マスメディアの話題から遠ざけることができた。
もう一つのトリガー、辞任を思い込むほどの党首会談の破談とはどのような内容だったのだろう。
安倍首相の頭から離れなかった事案は、11月1日に期限切れとなるテロ特措法だった。しかし、テロ特措法の延長もしくは新テロ特措法の成立を民主党が認めるはずはない。方法があるとすれば、民主党を与党に取り込むこと、すなわち大連立である。
11月初めの大連立騒動で小沢党首がぐらついたように、大連立は小沢党首をなびかせる甘い罠で、フィクサーは8月に民主党の幹部に大連立の打診をしている。そのとき得た手応えで小沢党首へのアプローチが有効と判断して安倍首相に大連立を提案し、安倍首相がそれに最後の希望をかけたとしたらどうだろう。
だが、風前の灯の安倍内閣なら解散衆院選挙で勝算ありとみた小沢党首は、はなから話にのらなかった。

安倍から福田の急展開の裏に

ここで注目すべきは安倍首相辞任から福田擁立までのすばやい展開である。
フィクサーは、パリにいる森元首相への電話から逆算すると、安倍首相の辞任から7時間半以内に福田氏擁立を取り付けているのである。フィクサーといえども与党の自民党総裁、次期首相候補の情報を集め調整し半日で後継者を擁立するなどということは容易ではない。しかも、電話の内容からは、古賀派、津島派、町村派の幹部クラスの調整ができていることをうかがい知ることができる。
政治家が黙って説得を聞き、そのまま諸手をあげて賛成するなどはありえない。各派閥の領袖、首相経験者に状況を説明をし懐柔するにはそれなりの時間がかかるのは当然である。しかも国会開催中だとはいえ、森元首相のように東京を離れている議員には電話で話をつけなければならない。
しかし、福田氏擁立の大局は12日の午後の間に決まった。13日は党内で最終的な調整を行ったにすぎない。

安倍首相辞任の前に、フィクサーと自民党幹部との間でネゴシエーションが進んでいたとしたらどうだろう。重要なテーマのために会談と電話でのやり取りが密接に行われていれば、連絡を取り合うのに躊躇はいらない。お互いが連絡を待っているからである。では、自民党の重要な幹部に持ちかけ密接に連絡を取り合わなければならない話題とはなんだろう。
安倍首相が辞任の意思を決定的にした党首会談の内容、大連立以上に密接な連絡をとりあう必要がある事案があっただろうか。
当時、大連立構想がフィクサーと自民党幹部との間で進んでいたのであれば、福田氏擁立に関するフィクサーの調整は挨拶抜きで行える状況である。

小泉-安倍-麻生路線と反小泉

12日、麻生太郎幹事長ら執行部が主導して固めた19日投開票案に基づき、総裁選管理委員会が14日公示、19日投票の日程を示す。これに関して、麻生氏が自分の都合に良いように総裁選のスタート時期を設定したとの批判が相次ぐ。さらに党内に安倍首相退陣に関する連帯責任を指摘する声もでて、先行逃げ切りを図る麻生氏への支持は広がりにくい情勢になった。

2006年の総裁選で小泉路線の継承に反対し福田元官房長官を推した中堅ベテランの勢力が、今回も福田氏擁立について動き出す。福田氏が所属する町村派、古賀派、津島派も派内の結束を確認するが具体的な方向は表にはださなかった。一方、前回の総裁選で立候補した谷垣禎一元財務相は派閥の緊急総会のあと「政権転換が必要だ」と麻生氏以外の候補者の擁立を明確にする。

13日付けの各紙は、「麻生幹事長が安倍首相から辞意を最初に聞かされたのは、10日夕の自民党役員会後だった」、さらに「11日昼に官邸で行われた政府与党連絡会議後、首相は再び辞意を漏らした」ことを報じる。午前中の臨時総務会で、14日公示、19日投票の総裁選日程が出されるが反対が相次ぎ、結局午後には投票日を25日にする方向に変わる。短期決戦で総裁選を有利に進めようとした麻生氏に対して、ベテラン議員から「麻生幹事長は2日前に知っていてなぜ辞任を止められなかったのか」と批判が飛び出すなど、一気に反麻生の動きが巻き起こる。

額賀財務相は津島派の総会でいち早く立候補の意向を示したが、同じ派閥の青木幹雄前参院議員会長は距離を置き、額賀氏の地元茨城県連も前回総裁選の麻生氏支持を変えない。谷垣禎一元財務相は谷垣派15人では立候補に必要な推薦人20人に届かないとみて態度を保留する。
町村派では福田元官房長官を推す声がある一方、会長の町村外相を推す声も出た。しかし最後は森元首相が福田氏擁立をまとめる。古賀派も福田氏支持の方向を決め、額賀財務相が出馬を表明した津島派でも青木幹雄前参院議員会長が福田氏支持を決め、参院議員を中心に福田氏支持が広がる。一方、小泉チルドレンを中心とした若手議員から出馬を求められていた小泉元首相は、不出馬と福田氏支持を明言する。
そして、福田氏は町村派会長の町村氏、森元首相と自民党本部で会談し立候補の決意を伝える。麻生氏は記者会見で立候補を表明する意向を示した。

14日、総裁選の告示が行われ、麻生氏、福田氏が立候補を正式表明する。前日、立候補の意向を示した額賀財務相は、派内をまとめきれずに立候補を断念した。
福田氏は、党本部で谷垣禎一元財務相、古賀誠、山崎拓両元幹事長と会談し推薦を依頼、さらに伊吹文部科学相と会い協力を要請する。丹羽・古賀派、伊吹派、谷垣派、高村派は臨時総会を開き福田氏を支持する。さらに福田氏への支持は山崎派、二階派にも広がった。

総裁選は、衆院304人、参院83人の各1票と、都道府県連の各3票の計528票で争われる。
福田氏支持を表明しているのは、町村派(80人)、津島派(67人)、丹羽・古賀派(46人)、山崎派(38人)、伊吹派(25人)、谷垣派(15人)で合計は271人。すべて福田氏支持なら国会議員だけでも過半数となる。伊吹派では何人かが麻生氏支持にまわることを黙認、津島派、丹羽・古賀派でも一部が麻生氏支持に回ると見られるが、福田氏支持は二階派(16人)、高村派(15人)にも広がり優位は揺るぎないものとなった。しかし、渡辺金融相が記者会見で派閥談合による総裁選出を批判するなど、古い自民党の論理による派閥政治への批判も出はじめた。

麻生太郎幹事長は党本部での記者会見で、「候補者が政策発表する前に、派閥推薦が決まるような状態は、派閥レベルの談合密室だとの批判を受けることになる」と述べ、ほとんどの派閥が福田康夫元官房長官の支持を決めたことを批判する。津島派では鳩山邦夫法相が麻生氏を支持し麻生陣営の選対本部長を務めることになる。

15日午前。自民党総裁選の立候補届け出が受け付けられ、福福田康夫元官房長官(71才)と麻生太郎幹事長(66才)が届け出た。

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