2008年1月6日

大連立を読み解く

福田首相は正直者

10月31日午後。福田康夫首相は首相官邸で記者団に自民、民主両党の大連立構想について聞かれ、「頭の中では何でもできるが、現実社会の問題としてはどうか。考えるのは自由だが、実行可能なものを考えてもらわないといけない」と述べる。さらに「党首会談で大連立構想の話をしたか」との質問に、「そこまではいたっていない」と答えた。

しかし政界は「大連立」と「早期解散」の話題で騒然となる。
福田首相と小沢代表の党首会談の仲介者が、読売新聞会長の渡辺恒雄主筆だったことが漏れはじめたからだ。渡辺会長は、自ら読売新聞の社説で自民、民主両党の大連立を提唱し続けている熱心な政界再編論者である。
町村官房長官も記者会見で大連立構想の一人歩きを牽制、公明党も北側一雄幹事長が記者会見で大連立について強い不快感を表明する。疑心暗鬼の公明党に対して森元首相は、自民党本部で細田博之幹事長代理に、公明党との連立を維持する、大連立構想には乗らないなどで福田首相に譲らないように提言し承諾を得たことを伝える。
民主党も「次の内閣」の会合で大連立が話し合われたのではないかと質問が出るが小沢代表はこれを否定、正副幹事長会議でも「昨日の党首会談の内容を教えろ」と声が上がるが、鳩山由紀夫幹事長も内容を知らず困惑する。

11月1日、小沢一郎民主党代表は宇都宮市内のホテルの記者会見で、民主党が政権に参加する大連立構想について、「考えていない。衆院の解散・総選挙に向けて過半数を取ることが当面の最大の目標だ」と否定し、さらに前回の党首会談の内容について、「大部分が首相からのテロ対策特別措置法のお願いだ。解散や連立とか、政局論的な政治問題は一切なかった」と改めて語った。
もう一つ注目を集めはじめたのが、国際的な平和活動のために自衛隊の海外派遣を可能にする恒久法の制定である。小沢代表は記者会見で、国際貢献や平和の維持確保のための基本法は年来の主張だと述べた。実際に小沢氏は旧自由党時代から安全保障基本法案として自衛隊派遣の恒久法を練っている。これを受け、同日、町村信孝官房長官が恒久法の制定に言及したことで、福田首相と小沢代表の2回目の党首会談で取り上げられる可能性がにわかに浮上する。

2回目の党首会談の前にメディアは情報を集めようとするが、先の会談後に両氏に緊張感がなかったことから推察される「年内の解散総選挙は遠のいた」程度の情報しか得られない。山崎拓元幹事長、二階俊博総務会長、谷垣禎一政調会長からも具体的な話は聞けず、伊吹幹事長の「自民、民主両党の政策の違いから大連立は難しい」という見解や、民主党の山岡賢次国会対策委員長の「結果にかかわらず、民主党の方針は変えない」いうコメントが伝わる程度でしかなかった。

初めから大連立だった

11月2日午後3時、2回目の党首会談がはじまる。会議は約1時間10分行われた後中断。午後6時過ぎに再会しさらに1時間行われ午後8時前に終了した。

会談後、与党幹部が記者団に「連立と恒久法制定について話をしたと報告を受けた」と語り、大連立は「今は向こうが持ち帰ってる段階だ」と明らかにする。
午後9時前、福田首相は記者団に連立政権の協議について、「国政を進めるための体制の必要性を前提に、政策実現のための新体制をつくることについて話した」、「小沢代表の持論の恒久法を国連の決議や承認した活動を原則に進めていくことを話し合った」、「民主党からの入閣については話し合っていない」、「小沢氏が党内で協議するために持ち帰った」と説明し、30日の党首会談も連立を念頭においていたこと、大連立の構想が参院選で惨敗したときにスタートしたことを明らかにする。大連立構想は森氏、中川氏、青木幹雄前参院議員会長の3人が安倍前首相の退陣と福田政権の樹立を前提に考えられたものだったという。

その日、森朗元首相は、埼玉県深谷市の講演で自ら大連立のための会談を勧めたことを認める。中曽根氏もテレビ番組の収録で「小沢氏は思い切って大連立に踏み切るべきだ。国政に首相と小沢氏の2人が責任を持て」と強く後押しをし、読売新聞グループ会長の渡辺恒雄氏も「大連立は早ければ早いほうがいい」と持論を展開する。中川直元幹事長も「大連立は衆参分断政府の状態のもとでは当然だ」と推進への意欲を語った。

一方、福田首相の提案を持ち帰った小沢代表は、党役員会を開いて対応を協議する。しかし「2大政党が国民の期待」「政策協議に入ること自体反対」などの慎重意見、反対意見が噴出し、連立協議に賛成した役員はいなかった。民主党は協議に応じない方針を決め、小沢代表は首相に「連立はのめない」と正式に伝えた。
「大連立」によって政局の混迷を打開しようとしたを図る福田首相の試みは失敗に終わり、政権交代を目標に進んできた民主党内で、協議に乗りかけた小沢代表の立場は不安定なものとなる。

自民党内でも2日の党首会談に先立ち、町村信孝官房長官が、連立政権協議が議題となると個別に回った自民党各派の領袖に話したところ、山崎拓前副総裁、谷垣禎一政調会長、津島雄二元厚相らほとんどが連立に批判的だった。伊吹文明幹事長も政策の違いから大連立が難しいことを記者会見で述べる。結局連立に賛成したのは、二階俊博総務会長だけだった。
そして、大連立協議の仕掛け人の中心が、森喜朗元首相、中川秀直元幹事長で、中曽根康弘元首相、読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長兼主筆が強く後押ししたことが明らかになる。山崎前副総裁は、渡辺会長に大連立反対を電話で伝え激怒されたという。

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